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雑所得vs事業所得 税務署と納税者の果てしない戦い

   
雑所得vs事業所得 税務署と納税者の果てしない戦い

夏に国税庁が驚くべき発表をした。
収入300万円以下の副業は、法令解釈の変更でそれまで事業所得として認められていた件についても雑所得になる、ということだった。
昭和45年に作られた通達を変えて、より多くの税金をかき集めようという意図が見え見えだった。
この発表がネット上で炎上し、多数のパブリックコメントが寄せられ、国税庁は世論に屈服した。つまり法令解釈は上記方針をやめて、新しい解釈となった。

従来の解釈

納税者の所得は、本業はサラリーマンなら給与所得、自営業なら納税方法によるがおおよそ事業所得になっているだろう。
これに対して納税者が副業をしている場合、従来の解釈はその副業の収入が生活に必要な収益を上げていれば事業所得に見なされたが、そうでなければ一律雑所得であった。
給与所得の場合はまず事業所得を認めてもらえることはなく、また従来は会社も副業を認めてこなかった。

コロナウィルスによる働き方の変化により、副業、複業が増えてきている。副業を公然と認める企業も増えてきた。ただし労務管理の面で給与所得を得る業種(例えばコンビニのバイト、別会社への勤務)は認められず、自営業ならOKというケースが多いだろう。

つまりサラリーマンの副業は、会社に隠れてこっそりやるのでなければ自営業しかできず、生活費を稼ぐ主たる手段は給与所得である以上は副業は雑所得以外の選択肢がなかった。

新しい解釈の失敗

国税庁は夏に、年収300万円を超える場合のみ事業所得を認め、超えない場合は一律雑所得とすると発表した。これに対して様々な反対意見が寄せられた。
雑所得と事業所得の最大の差は、損益通算だ。損益通算とは、複数の収入、支出をすべて合算して計算できるということだ。
事業所得ではないが損益通算が認められている大家の場合を説明しよう。例えば給与所得とマンション経営による不動産所得の場合、給与で800万の収入、マンション経営で-500万の収入、つまり赤字があった場合、800-500=300万円が納税者の収入とされて、ここから税金の計算をされる。今の税率なら、300万円に対しては10%なので、所得税は30万円だ。別の言い方をすれば、1つの仕事の収入で別の仕事の赤字の補填をすることができる。

その一方で損益通算ができないと、個々の収入に対して収支を計算され、最後に合算する。別の言い方をすれば、1つの仕事の収入で別の仕事の赤字の補填をすることができない。先の例であれば、本業は800万円の収入、副業は-500万円の赤字だが損益通算できないので-500万円の副業に対しては収入0円として計算され、総合計が800万円の収入になる。現在の税率では23%なので、所得税は184万円だ。
30万円と184万円。違いは150万円にもなる。

副業を始めたときは軌道に乗らないので、悪くて赤字、よくても少ない収入になると予想できる。300万円に届くのはずっと先だ。
長期で自立を考える人が手始めに副業で始めることはよくある。そういう人の今後の生活をつぶすような解釈の変更に炎上したということだろう。

修正案

下図は国税庁が示す資料にあった、修正案だ。

国税庁 事業所得 雑所得 修正案

国税庁 事業所得 雑所得 修正案

修正案では記帳・帳簿書類の保存があり、「社会通念上事業所得であると通達の解説で説明できれば」、副業を損益通算が可能ない事業として扱うことが可能になる。

社会通念上と書かれているか、結局は国税庁、あるいは窓口の人の解釈次第だ。
法律に書かれてない細かいことは解釈で使い方を変えるという習慣をずっと続けている。この解釈が厳しめなら誰にとっても幸せでないだろう。
財務省、国税庁は国を豊かにすることを考えず、納税者から奪い取ることしか考えてない。
重い所得税は働く気持ちを奪う。その結果は社会主義の世界に思えてならない。
いっそ所得税を半分以下にして、すべてを損益通算可能なシンプルな構成にして、パートの103万円の壁も制度上なくし、節税が意味のないと思えるくらいになれば、稼いだだけ手に入れられてやる気が起きるのではないだろうか。
案外、税金が重いので日本は30年も停滞しているのではないかな。誰かこういう大胆な政策を取り上げる政治家はいないものだろうか。

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著者プロフィール
skyhighblue
本業はソフトウェアエンジニア。2005年頃に低い金利が嫌になり投資を開始。それ以来、ライブドアショック、リーマンショック、ウクライナショックを耐えて市場にまだとどまっている。日本の株主優待優待を中心に古くはBRICs投資、最近ではUSの個別銘柄にも投資。
他にはクレジットカードを用途別に使い分け、ポイ活も実施。常にお得な情報を探し、ふるさと納税も定期的に実施。
 
 

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