お菓子や冷蔵品、アイスクリームを手掛ける食品メーカーの江崎グリコ(2206)が苦境に立っている。
基幹システムを更新したらシステム障害で停止。おかげで冷蔵品の出荷が全くできなくなり、その対策は6月になっているようだ。
4月に稼働開始したシステムでシステム障害が発生し、出荷ができなくなったと発表したのは4月17日。
それから半月経ってシステム障害の復旧、対策が予想外の時間がかかるとして、6月の復旧に延期した。
基幹システムの入れ替えって話は珍しい話ではない。数年前にみずほ銀行も同様にやって、障害で止めまくった。ATMでキャッシュカードが戻らず困った、という話があった。
今回のシステム障害は製造から販売までも管理する生産管理システムで起きているらしい。
4月3日に新システムに切り替え後の発生した障害で物流センターからの出荷が遅延し、遅配が始まった。
いったん再開したがDB不整合などの問題があり再停止し、今回の発表に至っている。
ではシステム障害って何のシステムで発生したのというと、ネットのニュースによればSAPらしい。
SAPは古いソフトウェアのサポートを打ち切り新ソフトウェアに更新するよう顧客に言っているそうだ。
しかしSAPを扱える技術者が少なく、また同様に更新している案件が多数あるようで技術者を集められない事情があるようだ。
2025年の崖 というキーワードがふと思い浮かぶ。
運送業の2024年問題は、法律による残業規制で運べない荷物が多くなるという話だった。この4月から現実のものになっており、再配達を減らすなどいろいろな努力が見えるがまだ抜本的な対策にはなっていない。
一方で2025年の崖はIT関係者が知る言葉で、2018年に経済産業省が発表した資料で使われている。
SCSKのページに説明があるので引用する。
日本企業の約8割が依然抱えているレガシーシステム(独自OSで稼働する過去の技術で構築された、複雑化・老朽化・サイロ化・ブラックボックス化したシステム)がDXの推進を妨げていると指摘。レガシーシステムの保守・運用に貴重なIT人材資源が割かれ、最新システムへの移行が滞る要因としています。そして、この状況が続いた場合は2025年から2030年の間に、日本経済全体で最大で年間12兆円の損失が生じる可能性があり、日本経済停滞の一因となると警告しています。
以前からこの手の説明は読んでいたのだが、ピンとこなかった。老朽化システムというものは2025~2030年でなくてもあるし、DX推進の妨げというなら今やってしまえばいい。何も2025年まで待つ必要はないよなと。
ところが、2025年の問題は上述のSAPのサポート切れにかかわると書いている人がいた。SAPのシステムの難解さ、技術者の不足、しかしSAPのサポート終了期限が迫ると、ろくなことがなく、DX推進というよりは経済に影響があるものであると。
経済産業省の上述のレポートの執筆者がSAPを名指しして書いたのかはわからないが、間違いなく問題となりそうなにおいがする。
グリコだけでなくほかの企業でも発生するのではないだろうか。SAPに代わるソフトウェアはないのかな。
どういう対策をしているのかわからないが、ひたすらSAPのシステム障害対策をしているのであろうと思われる。
前のシステムに戻すとか、より有効な対策に切り替えるべき時期と思うが。
2024年6月13日追記
一部商品の出荷が再開するようだ。
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