積立投信の黎明期に安い手数料で人気を博したセゾン投信の中野会長の退任が発表された。
名前の通りセゾン系列の投資信託を扱う会社だ。セゾン系列は元は西武鉄道の関連グループであり、中核事業として西武百貨店、スーパーの西友、セゾンカードがあり、それらの営むパルコ、ファミリーマート、無印良品、ロフトがあった。
ところが傘下の企業の破綻から解体がすすみ、今はもうない。残っていれば7&i,イオンとともに日本の三大流通グループであっただろう。
西武百貨店は7&iに、西友は傘下の無印良品、ファミリーマートを売却して、ウォルマートが買収。ファミリーマートは伊藤忠が買収。パルコは独立後、大丸、松坂屋のJFRの傘下に。このようにバラバラになった。
セゾンカードにいた中野氏が働きかけて作ったとされている。当時の投資信託は販売手数料も信託報酬率も高いものばかりで、顧客サイドに立ったものではなかった。
長引く安い貸出金利と資金需要の低迷で、銀行の窓口では高い手数料の投信に乗り換えるよう高齢者を言いくるめる行為がつづき、金融庁の指導があったくらいだ。一方で海外に目を転じるとヴァンガードが安い手数料で全世界に投資する投信をいくつも出していた。
消費者がそれを買うには、一部の投信を除くと当時は海外の銀行口座をつくり、海外の証券口座を作ってそこでETFで買うしかなかった。
そんな状況を憂慮する人は他にもいたが、中野氏はセゾン投信を立ち上げて、ヴァンガードの安い手数料の投信を運用、販売した。2007年から、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドとセゾン資産形成の達人ファンドを運用し、今では追加した投信を含めて運用資産は6000億円になっている。
自分も開始当初にグローバルファンドを積立で購入したが、その後換金が必要になり、今は僅かな口数が残っているだけだ。
日経によれば、会長である中野氏が退任するという。不本意な退任らしい。
つまり、今までは低コストのための直販を掲げてきたが、証券会社経由での販売を開始する、信託報酬率を上げるなど、他の投信を運用する会社と同じになるかもしれない。
投信運用は、この16年の間に大きく変わり、大手運用会社でも低コストなインデックスファンドが増えた。確定拠出年金の開始で、年金運用専用だった投信が多くなって、一般でも買えるようにもなった。
セゾン投信が目指した状態はある程度達成され、果たした役割は他の投信会社に引き継がれていくようだ。
中野氏の今後が気になるが、きっと消費者に寄り添った新たな仕事を開始してくれると、願う。
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