企業向け福利厚生提供サービスを手掛けるベネフィット・ワン(ベネワン)(2412)にエムスリーがTOBをかけたが、第一生命が横から割り込んできた。
この先どうなるのだろうか。
ベネフィット・ワンはパソナグループ(2168)傘下の企業向け福利厚生提供サービスを手掛ける会社だ。
20世紀は企業は福利厚生サービスを自前で用意していたが、長引く不況のためなのか自前を捨ててベネワンのようなサービスを導入するようになった。
この結果企業間の福利厚生の差は縮んだが、一方でとてもよかった企業もサービスが改悪されるようになった。
不況なのだから仕方ないというところか。
こういう風潮のおかげでベネワンの業績は伸びたのだが、福利厚生だけでなく健康診断、ワクチン接種なども手掛けているようだ。
このため、大量の個人情報を抱える企業になっている。
11月14日にエムスリー(2413)が1,600円でTOBを発表した。エムスリーに対してパソナは応募を表明し、この時点でエムスリーの買収は決定するだろうと思われた。
エムスリーは医療従事者向け情報サイトを運営し、製薬会社の情報提供支援を行っている。ベネワンとは一見関係なさそうに思えるが、ベネワンが健康診断を提供しているので、ベネワンの顧客情報に価値を見出したのだろう。
エムスリーはベネワンを子会社にするものの、上場は維持の方針。
12月7日になって第一生命が突如1,800円でTOBを発表した。TOB価格はエムスリーよりも高く、半分の弱の株を集めたらパソナの持つ株をベネワンが買い取り、最終的にベネワンの非上場化を目指している。
現時点ではパソナグループの翻意は伝えられてないので、予定通りエムスリーに持ち株を売却するのだろう。パソナグループは51%保有しているので、そのままエムスリーに渡れば第一生命のTOBは失敗だ。
しかしTOB価格のつり上げにより、パソナグループが翻意するとエムスリーのTOBは失敗し、第一生命が集めた株数によりTOBの成否が決まる。
目標としている約15%もの株が集まれば、パソナグループが第一生命の案に乗ることもあるだろう。その場合はベネワンにはパソナが持つ株の買い取りという負債が残る。
今後の企業の成長に必要な資金のねん出が難しくなるかもしれない。
第一生命が20%くらい買い集めて、でもパソナが予定通りエムスリーに持ち株を譲渡したら、ベネワンは大株主2社の対立に巻き込まれることになる。
エムスリーは今後完全買い取り、非上場化を目指すことになるかもしれない。
そうなるくらいならパソナが経済原理に従って、より高いTOB価格を付けた第一生命に応じるほうがよさそうに思える。
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