ダイドーリミテッド(3205)は年間配当予想を突如5円から100円に20倍に上げた。業績が20倍というわけでもなく。背景に何があったかを探る。
聞いたことがない企業だ。缶コーヒーの会社かな?その程度の認識だったが、本業はアパレル中堅で、ニューヨーカー、ブルックスブラザーズを手掛ける。
ああ、あのブランドの会社かと思い当たる。それにしてもアパレルはブランドと企業名が一致しないからわからない。
本業のアパレルは復調し、黒字化している。9割はアパレルだが、残り1割は不動産賃貸業だそうだ。この不動産賃貸が安定収益を上げており、アパレルの不調をカバーしてきたようだ。
昨年秋までは株価は300円前後で、アパレルの不調によって上がらない状況だったようだ。
アクティビスト、物言う株主が豊富な不動産所有に目を付けたようで、旧村上ファンド系の投資会社が5%以上の保有をしている。
4月からアクティビスとによる企業価値の向上の話があり、会社は対抗策を考えるなど検討を続けきた。
6月末の株主総会では会社提案の取締役が過半数を占めたが、依然としてアクティビストは保有している。
圧力に屈したのだろうか。年間配当計画を20倍にすると発表した。
通常は配当の原資は利益から行う。儲かった年は配当が多く、儲からなかった年は無配になる。楽天Gが赤字のため2024年度は無配にしたのがいい例だ。
2023年度は好決算をだした企業が多く、6月頃の配当通知で多額になって驚いた人も多いだろう。
本来は配当とはそういうものだ。
しかしダイドーリミテッドの件は違うようだ。
日経に記事が出ているので引用する。
5日の記者会見で株主還元の原資には不動産の売却益を充てると説明したダイドー。不動産事業で保有する東京都千代田区のホテルと同文京区のオフィスビルの2件を売却する方針を既に示していた。売却益については「詳細な数字は答えられない」(山田会長)とした。
保有する不動産を売って、それを原資にして配当を増額するという。
これは企業価値の向上につながるのだろうか?
合わせて、自社株買いも発表し、株価は高騰した。
同社は4日、25年3月期の年間配当を従来予想から95円積み増し100円にすると発表した。27年3月期までの3年間は年100円の配当方針を継続する。合わせて最大50億円規模の自社株買いの方針も明らかにした。同社は配当と自社株買いで最大134億円かかるとの試算を示した。
アクティビストは株を売買してその差益で巨額の富を得ようとする営利団体だ。投資ファンドの一種であるので、その資金源は広く投資家から募って(多くは私募ファンド)、そのお金を元手に増やすことに躍起になる。そこには投資先の企業価値の向上を考えているようには思えない。
だから昔の村上ファンドはたたかれたのだろうと自分は思う。
一方でいわゆるファンドである、カーライルやJICがある。最近のTOBで登場したファンドを拾ってみた。
MBOの場合にファンドが資金源として登場し、企業は経営にアクティビストを排除でき、ファンドは再上場時の利益を期待できる。win-winの関係だ。
今回のダイドーリミテッドの配当増額はMBOとは関係ないが、アクティビストが短期的な利益を求めて、内部留保を吐き出させている。
短期的な利益のために、安定収入源である不動産を売却する。この結果、アパレルが再び不調になった時、アクティビストは株を売らずに支えてくれるだろうか。いや真っ先に高値のうちに売り払って利益を手にするのだろう。
企業価値の向上とアクティビストが言うときは、短期売買で儲けるためのネタを出せ、といっているのだろう。
アクティビストの活動が悪いと否定するつもりはないが、無理やり内部留保を吐き出させるようなことは企業活動にデメリットになりかねない。企業側に立った企業価値の向上が求められる。
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